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      円錐(690.2m) 

発足地区から見た円錐峰(中央・奥)

1/25000地形図「柏 木」「四番川」

苔生した細いV字形の中を行く
稜線に飛び出すと円錐峰が姿を現す
稜線に飛び出すと円錐峰が姿を現す
錐峰林道終点に車を停める
最初のナメ滝
核心部のゴルジュは慎重に通過

丸や三角など、形がそのまま山名となった山は多いが、これが円錐ともなるとそうそう見当たらない。いわば立体表現であり、一人の人間が少なくても三方向から見ていなければ、そんな表現にはならないはずである。厚田川の上流に位置するこの山、見る角度によっては円錐形に見えたのであろうが、実際の地形は四方に尾根を張り巡らす四角錘に近い山である。円錐形の山と言えば、道内では下ホロカメットク山や阿寒富士などが該当するが、この山名を命名した当時、必ずどこかに円錐形を思わせる地点は存在したはずである。

この山へのアプローチは計画では厚田川・左股川林道であった。以前、安瀬山へ登った時のアプローチとした林道で、ゲートは無かった記憶がある。最近はゴミの処理に金銭等の代償が求められる時代となり、不法投棄防止のために林道が閉ざされるケースが多くなってしまった。我々にとって林道は、山への大事なアプローチで、ゴミ捨て場にされては適わないが閉ざされるのも困ったものである。左股林道へ入って直ぐにゲートが現れ、ここも施錠されていた。取り付きまでは少なくても10kmはありそうで、余儀なく厚田川林道へと計画を変更する。

 厚田川林道にもゲートはあるが、なぜかこちらは開放されている。走ってみて判ったが、こちらは何となく胡散臭いグループが林道を行き来している。この時期であればキノコなのか密漁なのかは全く判らないが、彼らによってゲートが開けられている可能性は高い。もっともこの付近の山に、純粋に登山目的のみで入るグループも稀であろうから、彼らに言わせれば、我々こそ目的も判らぬ胡散臭いグループなのかもしれないが…。計画よりは多少は長くなったとはいえ、円錐峰自体へのルートは短く、彼らの “仕事”時間内には下れそうなので、入渓地点まで車を乗り入れることにする。もっとも、薮山仲間である山の時計」・EIZI@名寄さんの記録では、ゲートから自転車を使用したようであるが、それが正攻法であるのは確かである。予定の標高198m標高点の橋からは錐峰林道と書かれた短い林道が入っていて、その終点広場に車を停めることにする。

 頂上までは直線距離で1.2km、多少遅れたが十分射程距離内である。さっそく計画の実行である。広場からは踏み跡となり、沢の流れへと続いている。ここしばらくの少雨のためか、水量は少ない。イタドリやフキをはじめとする雑草も枯れかける時期となり、川岸を歩くことも出来る軽快な遡行である。20分ほど歩くと、落差がせいぜい2m程度ではあるが、ナメ滝が現れる。何も出て来ないと思って歩いていただけに、この地形的変化はラッキーである。さらに20分で、意外にもゴルジュ状となる。最初の小滝は難なく通過するが、次の落差78mの滝は微妙である。鼻っから、いわゆる“ブタ沢”(全く変化のない沢)を想定していたこともあり、パーティの足回りは急登・藪漕ぎに備えスパイク系を選んでいた。フェルトであれば何も問題はないが、スパイクは磨かれたナメには滅法弱い。いつも以上にしっかりとステップを選び、最後は潅木や笹を頼りに滝上へと抜ける。このゴルジュを過ぎると350m二股は近い。

 二股からは水量がさらに細り、広く刈分けられた登山道といってもよいほど軽快な登りとなる。下手な登山道よりも歩きやすいかもしれない。傾斜が増してくると、苔で両岸が覆い尽くされた細いV字地形の登りが続き、最後はいきなり藪斜面となる。この時点で稜線までは一息といったところだ。登りの藪は薄い方で、スパイクがしっかりと地面を捉え、難なく細い稜線上へと飛び出す。だが、右手にはさらなる高みが現れ、どうやらそれが円錐峰頂上のようだ。頂上を意識しながら針路を取っていたのだが、どこかで東へずれてしまったようである。稜線の様子はEIZI@名寄さんの記録を読んで知ってはいたが、密度は比較的薄いが太い根曲がり竹が行く手を塞いでいる。この際、この“豪勢な藪漕ぎ”は楽しんだ方が得策かもしれない。残り200m北京五輪の金メダリスト・北島康介選手ではないが、ストロークの数は少なく、しかし大きくすることにより藪漕ぎにもリズムが出て、スピードを上げることは出来ないものか?…まあ、こんなことでも考えていなければ、この作業はやっていられないというのが本音であるが。

頂上からの展望は意外に良好 あまり指呼されることのない濃昼岳も真正面にバッチリ!

 その甲斐あってか意外に早く周りの藪が低くなり、頂上となる。この手の山で、こんなに展望の利く山も珍しい。薮山として名高い濃昼岳を間近に、北側には浜益、群別、尾白利加岳など増毛の山々、東側には南北・別刈岳、南は厚田川の渓谷の背後に発足付近の黄金色に染まった水田など、360°視界を遮るものは何もない。山が高ければ高いほど、付近の風景は地平線状態になってしまうものだが、690mの山であれば周りの山々も迫力ある姿で望むことができる。数々の藪山を経験してきたが、今だKo玉氏の「嗅覚」の域には到達していないようで、三角点はついに見つけることが出来なかった。

 下りは見落とした地点の確認もあり、頂上からいきなり斜面を下る。直ぐに登りの時に見ていた裸地に飛び出すが、この山域は豪雪地帯であり、いつまでも解けない積雪によって斜面ごとずり落ちたものと思われる。同様の光景は同山域の安瀬(やそすけ)山・東面にも見られる。この裸地を慎重に下ると倒木によって沢の源頭部が埋められたような場所となり、最後は単なる藪斜面となって往路の沢へと続いていた。分岐点は笹で覆われ沢形もはっきりせず、登りでこのルートを見つけ出すことは難しい。

6年前、濃昼岳から初めてこの山を見たが、なかなか奥深く手の届かない山であった。その後、周囲の山々への山行を重ねたことで、徐々に身近な山域となっていった気がする。今回はSakag氏の来札に合わせ、取り急ぎ選んだ一山であったが、結果的には意外と簡単にピークを落すことができた。帰路林道のゲート箇所で数人がたむろしていた。もしかすると我々の通過を待っていてくれたのかもしれない。林道のゲートが開いているというラッキーさはあったが、山を一番遠くしているのは自分自身であると改めて感じる山行であった。(2008.9.21)

 「一人歩きの北海道山紀行」sakagさんの山行記

【参考コースタイム】錐峰林道終点 P 8:50 最初のナメ滝 9:10 ゴルジュ10mの滝 9:30 稜線上 10:55 円錐峰頂上 11:25、〃発 12:05 ゴルジュ10mの滝 13:15 錐峰林道終点 P 14:05 (登り 2時間35分、下り 2時間)

メンバー】Sakagさん、saijyoチロロ2

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