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   恵庭岳(1319.6m)

5月の支笏湖と恵庭岳

1/25000地形図「恵庭岳」

溶岩が固まって出来た見晴台
見晴台から望む恵庭岳頂上
登山口には既に多くの車が止まっていた
この時期はやっぱりアジサイ
見晴台から望む紋別岳と支笏湖
頂上到着

  恵庭岳といえば1972年の札幌冬期オリンピックでは滑降競技の舞台となった、超有名どころの山である。私が高校生だった頃に一度だけこの山に登っている。現在はいい年齢となったが、当ホームページをやっていることでもあり、その中では未踏の一山なので、再び恵庭岳頂上に立ってみたいと思った。この間には清掃登山ということで見晴台までと、滝沢には岩訓練のために何度か訪れてはいたが、頂上となれば40年ぶりである。遠ざかっていた理由として2001年から立入り禁止となっていたからで、その真意が今一よく判らなかったためである。調べたところでは2001年に崩落があり、その後の調査でもそれがさらに拡大しているというのがとりあえずの理由らしい。今回は無法者と思われるかもしれないが、敢えてこの立入り禁止に立入ろうという計画である。

 

《まずは第二展望台へ》          

  恵庭岳登山口は朝から車で溢れていた。やはり、道央圏ということもあって人気の山ということであろう。若いカップルや年配グループが三々五々出発して行く。そんな中で、私とチロロ2さんは超スローペースでの出発である。30℃を超えそうなこの日の陽気、急いだところで仕方がない。途中、昨年の秋に登山者が迷い込んで遭難したという涸沢の分岐を通過する。さすがに管理者側も神経質になっているようで、間違ってそこへ入り込まぬようロープを張って、注意を喚起している。この山はそもそも登山者が多く、遭難事故は確率的に考えてもその実数は多くなるように思う。

                              

 ここを通過して岩がゴロゴロしている足場の悪い登山道を進んで行くと地形図上でコンタが混んだ急斜面となる。登山道はここを斜めに通過して上がって行く。一旦、緩い登りとなるが、ここから見晴台までが、この山が険しいといわれていることを象徴するかのような登りとなる。特に登りと下りが別々となった、道内の山では珍しい“中央分離帯”のある区間があって、双方が一方通行となっている。20年ほど前に清掃登山で訪れたときには木々につかまりながら下った記憶があるが、今は登山道自体が削り取られてしまったようで、下りに関しては、支えとなる残置ロープなしでは苦労しそうな感じだ。ここを登り切れば見晴台は近い。 

              

 尾根上の溶岩が露出したところが見晴台で、支笏湖側の展望が実に良い。この日は大陸からの招かざる客の影響で、春霞のような光景となっている。紋別岳やモラップ山が浮かんで見えるが、春霞ならぬpm2.5となれば、その光景も歪なものに見えてくるから人間の目というものは色眼鏡そのものと言えるのだろう。ともあれ、先は急ぐ。ここで待つというチロロ2さんを置いて、第二見晴台へと向かう。この日は意外に冷風が心地よく、この先は飛ばそうと考えていたが、やはり気温の高さはごまかしがきかないようで、すぐに脱水気味となって思ったようには進めない。

 

九合目付近からの頂上岩峰は大迫力 V字状から振り返るとオコタンペ湖が見える
頂上から、札幌方面の山々と金麦 頂上手前の岩場で休む登山者

《恵庭岳頂上へ》

  さて、第二見晴台。現在はここが頂上と決められているようだが、それでも地球は動いている。そんなはずあるわけないだろう! 率直な感想である。頂上標識もここに降ろしてきたようだが、子供だましじゃあるまいし… といった気分にもなる。だが、冷静に考えてみれば確かにここからのリスクが高いのは事実であり、何かが起きてからでは遅いのも事実である。だが、沢登りを例にとれば、そのリスクはこんなものではないし、例えばピリカヌプリへ登るヌピナイ川右股の高巻きは足を滑らせれば即 死亡事故である。しかし、ヌピナイ川が立入り禁止とはなっていないのは、そこに入る登山者がそれを知っていて、それなりの力量で挑んでいるという前提があるためであろう。もちろん、自己責任も踏まえてである。明瞭な登山道があって、その背後に潜むリスクにも気づかずに不特定多数の登山者が入っている状態を想像すれば、確かに怖い話ではある。結論的には痛し痒しで、現在のような看板を設置している中途半端な状況こそが、微妙さを保つ上では良い状態といえるのかもしれない。

                         

 私としてはもちろん立入り禁止のテープを潜らせてもらう。なぜなら、ここで問題となる危険に対しての山の判断力と力量は十分に持ち合わせていると自負できるからだ。岩峰取付きまでの登山道はしっかりとしていて何も問題はない。回り込む手前付近からの頂上岩峰は大迫力、だれもが登りたいと考えても当然である。ついそう思いながら足を止めて見上げていた。岩峰のすぐ横を巻く辺りでは、やはり上部の不安定そうな岩が気になったが、そんなところが気になるあたりは立入り規制の看板やテープによる効果なのだろう。詰めはオコタンペ湖や漁岳を背にして狭いV字状を登り、頂上直下の広場に出る。昔はここのV字状が恐ろしく感じられた記憶があるが、さすがにあれから40年も山をやっていると、あの時になぜ怖く感じたのかが理解できなくなった。

                                          

 ここから最後10mくらいの岩登りとなる。頂上から三ヶ所に残置のロープが垂れ下がっていて、どれを登ろうかと考え、真ん中に取り付いてみた。途中まではまずまずだが、ロープにテンションをかけなければその先が少々怪しい。しかし、こんなところのロープになど体重は乗せられない。結局、一番奥のルートから頂上へと飛び出す。頂上直下の登りについて、強いて条件付けをするのであれば、やはり一度でも岩登りを経験していることが望ましいかもしれない。頂上で休んでいたグループによれば、一番手前がやさしかったとのこと。確かに、ここの下りではロープなしでも十分であった。

                                       

 恵庭岳頂上、実に40年ぶりの感動を感じる。回りは何となく霞んだ山々ばかりだが、さすがに地元の山でもあり、見えているどの山にも馴染深さを感じる。ぐるり360°の光景よりも、むしろ今立っている足もと自体が一番新鮮であり、金麦で喉を潤しながら一人恵庭岳登頂の満足感に浸っていた。(2014.8.3)

参考コースタイム】  恵庭岳登山口 P 8:10 → 見晴台 10:35 → 恵庭岳頂上 11:35、〃 発 11:50 → 見晴台 12:45 → 恵庭岳登山口 P 14:15 (登山時間 登り3時間25分、下り2時間25分)

メンバーsaijyo、チロロ2

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