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   部落山(528.3m) ・・・ 昔は「仁宇布」の良き目印?

    

  

国道から見た部落山

  

 

 

1/25000地形図 仁宇布  

部落山への道路は積雪に埋まっており、入口に車を置く
離農した農家  廃屋状態となっていた
先行するIkkoさんをズームで捉えた
先行するIkkoさんをズーム

  Ikkoさんが持ってきたもしもの時の代替案の1つとして、部落山の地図が出てきた。正直なところそんな山など知らなかったし聞いたこともなかったので「何だ、それは・・・?」と思った。 入布山の東に伸びる尾根末端に位置するいわゆる里山で、仁宇布の部落に近かったのでこんな名で呼ばれていたのだろう。現在であれば“地区”ということになるのだが、以前の日本語では“部落”が普通だった。もちろんここは北海道なので、西日本における部落問題の部落とはニアンスが違う。三角点の設置が行われた大正時代にすでに点名として使われており、かなり以前からそう呼ばれていたのかもしれない。仁宇布から少し離れてみると判るが、この山は仁宇布の位置を明瞭に示している。仁宇布への行き来の際にはおそらく人々の良い目印となっていたのだろう。

登って行くルートを見上げる

  距離が短くて標高も500m台と低い。全く魅力が感じられなかったので、つい面倒でIkkoさんには一人で行ったら良いと答えていた。だが、先に登った仁宇布山が早々に終わってしまったこともあって、時間がかなり余ってしまった。雨模様のこんな日、億劫だったが私も付き合うしかなかった。アプローチとなる道路にはまだまだ積雪が残っており、道路入口に車を置いて山の際まで歩くしかない。目指す部落山は左側の斜面が開けており、見るからにそこから登るのが良さそうに見える。降ったり止んだりの中、準備に手間取る私としてはIkkoさんには先にスタートしてもらう。何か忘れ物でもあれば山行中それををずっと引きずっていなければならず、メンバーには悪いがいつもマイペースでのスタートとしている。もちろん歳のせいもあるのかもしれないが、こればかりはしょうがない。

 遠くに先行するIkkoさんを見ながら未だ積雪が残る道路を進む。既に離農して年月を重ねた廃屋があり、倒壊した飼育舎や朽ちた給餌器が散らばっていた。こんな光景を見ていれば、盛んに牧畜業が行われていた時代や、廃農への経緯までもが容易に想像されてしまうもの。そこには家族や親戚、関係者が居て、小さな営みの中にも栄枯盛衰がある。この仁宇布自体も赤字日本一として有名だった美幸線の終着駅で、鳴り物入りで開通したにも関わらず、わずか20年ほどで廃止となったことは有名。どんな時代にも残されるのは、名残を感じさせる里山や復活した自然だけかもしれない。

 廃屋を過ぎて橋を渡ったところで樹林帯へと突入。先行するIkkoさんの足跡を見落とさぬよう追って行く。右手の雪解けの流れの周りにはミズバショウが咲き始め、遅い春を感じさせてくれる。追っている足跡を見ていると、いつものことだが、先行者がポイント、ポイントでどう考えたかが何となく見えてくるもの。右手の斜面へと取り付いたが、目的のルートからは少し離れていると感じたのだろう。小沢を越えて左側へと移動、そのまま小尾根を進んで左側の急斜面へ取り付いたと思われる。キックステップで慎重にここを登り切ると右手に道路から見えていた斜面が現れた。見ていた感じとは違って、けっこう大きな急斜面。これを登り切らなければ頂上台地上へは抜けられない。

部落山頂上はこんなところ

 私は登山靴なのでキックステップはしっかりと刻めるが、Ikkoさんの場合はスパイク長靴なので、こんな場面では普通の長靴と何ら変わりはないはず。40°くらいありそうなこんな斜度でさえも平気で登って行くのだから、きっと何か彼なりの方法があるのだろう。私は左側の樹林帯近くへと逃げるが、Ikkoさんはこんなところでも真向勝負、幼木や潅木など何もないところを平気で登っている。急斜面からの展望は抜群で、つい先ほど登ったばかりの地味な仁宇布山でさえ容易に確認することができた。つまらないと思っていたこの山だったが、意外に個性的で、ルート的にも変化があって楽しいと感じる。ここを登りきると展望が大きく広がって平らになった。頂上台地上は単なる樹林帯で、その少し高くなった地点に頂上があった。もちろん、三等三角点「部落山」は積雪の下で、GPSがなければその位置の特定など出来るものではない。

 この日としては2山目の登頂、仁宇布山が平凡過ぎたこともあって、こちらの方が遥かに満足できる一山となる。頂上で休憩していると、ポツポツと雨脚が強くなり始める。あまりゆっくりとはしていられない。そのうち本格的に降り出してきた。雨に霞む仁宇布の平地を見下ろしながら40°の急斜面を急ぎ下った。(2016.5.4)

参考コースタイム】道路入口 P 10:00 → 部落山頂上 11:00、〃発 11:10 道路入口 P 11:40  (登り1時間、下り30分)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo

 **山行写真**

Ikkoさんの足跡をたどって小沢から小尾根へと移動

部落山への一番の急斜面

急斜面の途中から見た仁宇布地区   背後には仁宇布山、松山、沼岳が見える (Ikkoさん提供)

部落山頂上はこんな平凡なところだった

 

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