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      坊主山(790.7m)

胆振福山への下り、坊主山が真正面に現れる

1/25000地形図

登山口までは何とか乗り入れる
約10年経った「山小屋坊主」

道内に坊主山の名は多いが、どの山も頂上部に樹木が少ないことでこの名になったと思われる。もともと樹木が少なかったのか、伐採によるものかはわからないが、概ね標高の低い里山が多く、私は後者によるものと考えている。その中で最も登山者が多いと思われるのが、むかわ町・穂別の坊主山で、10年くらい前から登山者が急増した山である。今現在、今後はおそらく登山者が急増するだろうと予測される山はいくつかあるが、この山も以前にはそう考えていた最右翼の山であった。標高こそ791mと、道内にあっては低い方であるが、頂上の見晴らしが素晴らしい上に、林道や集材路が奥深く入り込み、これを利用することによって短時間でその頂上へ立つことが出来るという好条件に恵まれていた。日高町から札幌へ帰る途中、晴れていれば必ず目に留まり、裾野を広げた独立峰のようにも見え、誰しも一度はあの斜面を滑ってみたいと憧れる山である。昨今の登山ブームによって地元自治体もその価値に気付いたのか、登山口への標識が整備され、頂上付近には避難小屋まで設置された。

10年ほど前にこの山へ入った時、ちょうど「山小屋坊主」の建設中であり、スズキのジムニーが一台、頂上直下に停まっていたのには驚かされた。変わり者が別荘でも建てているのかと目を疑ったが、10年ほど経ってみると、立派な山小屋へと生まれ変わり、登山者の憩いの場となっているようである。こじんまりした小屋で、入口の戸が渋いのか、わざわざ開錠されているとまで書かれている。避難小屋としての役割を十分に果しているようだ。ちなみにこのドア、我が家の玄関ドアと全く同じで、当時はやっていたスゥエーデン製のもので、断熱効果が高いとのこと。どこかの家が立替の際に寄贈したものであろう。薪ストーブが設置され、炊事用のガスコンロも置かれ、至れり尽くせりといった感じである。一度はぜひ泊まってみたいものだ。

町道・穂別市街〜稲里線から約6km入ると坊主山登山口となるが、12月ともなると積雪があり、普通乗用車で登山口まで入るのは難しいだろうと思っていた。ところがこの日は、シカ撃ちのハンターが入っているのか、何台もの4WD車によって轍がしっかりと踏み込まれている。車体をふらつかせながらも何とか登山口まで車を乗り入れる。林道の賑やかさとは打って変わり、登山道を辿る踏み跡はエゾシカのものだけである。とはいえ、彼らの足跡も周りの雪が踏み固まっていて、それはそれで利用できる。登山道は作業道跡を利用しているため、道幅が広く明るい感じである。あのジムニーもこの道を走ってきたのであろうが、現在は途中に大きな岩石が転がっていて、車両の通行は出来ないようだ。

坊主山頂上にて
約10年経った「山小屋坊主」 頂上からは一番目に付く夕張岳

進むにつれて西側が開け、この日は遠くに苫小牧・王子製紙の煙突が確認できるほどの見通しの良さだ。何度か小沢を横切りながらも徐々に標高を上げ、気が付くと頭上の針葉樹林の背後には透き通るような青空が広がり、いつのまにか高山的な雰囲気へと変わっている。登山道は180度方向を変え、頂上台地上へと続く。エゾマツ林の向うに山小屋が見え、樹木の少ない、笹原の一本道へと変わる。進んで行くうちにまず目に飛び込んでくるのは、白く輝く夕張岳である。望遠レンズで覗くと、前岳や屏風岳を従えたその姿には圧倒的な迫力が感じられる。その後には十勝連峰、さらには目を転じてハッタオマナイ岳といった具合に展望が開けてくる。登山道は回り込むように小屋へと続いている。建てている時に偶然出くわした山小屋にも既に10年もの歳月が流れ、貫禄が出てきたようにさえ感じられる。

小屋の前で一息、いよいよ最後の詰めである。平地の中の、小山のような頂上部へと稜線を登り詰める。ふと見るとエゾシカの群れが笹原を一目散に駆けて行く。我々より一歩早く気配を感じたようだ。野生動物と現代人の微妙な差といえる。ひょっとしたら彼らの生活を脅かすハンターに対しての本能的な警戒心がそうさせているのかもしれない。農作物への被害をもたらし、人間社会では悪役扱いされる彼らだが、そもそもは身勝手な我々人間が生態系を乱す張本人である。そう考えれば登山という行為自体が、いかに傲慢な振る舞いなのかと、つい考えさせられる。

 厳冬期に、夏の登山道にと何度も踏んだ坊主山頂上である。だが、この10年間は展望が期待できない薮山への登山が多かったこともあり、360°遮るものがない広がりは実に新鮮な空間となって現れた。(2007.12.23)

【参考コースタイム】 登山口 P 9:00 山小屋坊主 → 10:15 坊主山頂上 10:35 、〃発 10:55 登山口 P 11:45 (登山道ルート;上り1時間35分、下り50分 )

  【メンバーsaijyo、チロロ2

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