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   ベッピリガイ(1307.3m) 

       

1/25000地形図 ピリガイ山  

西沢Ko玉ルートはこんな感じ

こんな小滝が連続した

 ベッピリガイ山は日高山脈中部の主稜線から少し外れたところに位置する山で、展望がすこぶる良いとWeb上にあった。以前、今は亡きKo玉さんとこのピークを目指し、競って薮を漕いでいる。だが、この時は一本となりの尾根に取り付いてしまったため、結果的にはまったく別の山に登ってしまった。それ以来私の脳裏から離れない因縁の山となっていた。

 この日は頂上部がどっぷりガスの中で、このまま登ったところで頂上展望など全く期待できそうもなかったが、正直なところを言えば私自身は頂上展望などどうでもよい。そうそう来ることのできない山なので、今回で何とか決着をつけたかった。Ko玉本に登場する精久氏がなぜか今回の山行で一緒というのも不思議な縁。このことについては、本当にまったく偶然だが、ペテガリ山荘で彼に声をかけられて二度目の対面となった。二度目とは言ってもKo玉本の中では何度も会っているので、なぜか旧知の仲ような親しみを感じた。彼はKo玉本の中で、シビチャリ山の下山中にどっぷり陽が暮れて、真っ暗闇の中を肩がらみ懸垂でサッシビチャリ川の険悪な函の底へと下った猛者である。私が思うに、おそらくだが、これはKo玉さんの引き合わせだろう。あまりに偶然過ぎるし、精久氏はKo玉さんが亡くなってから面識を持った人物である。Ko玉さんがどこかで我々を見ているような気がしてならなかった。

 ベッピリガイ山について、Web上ではやまちゃんルート、エバさんルートと、南側の尾根や沢からのルートがある。我々としてはせっかくのKo玉さんの引き合わせなので、彼が残していったノートにあった西側の小沢から攻めてみることにした。アプローチは、ベッピリガイ山西側の平坦地へと伸びる作業道からで、小沢の出合いに一番近いあたりから植林地を利用して軽いヤブ漕ぎで目的としていた小沢に到達した。この小沢、水量は少ないがその水の冷たさには私としては少々気持が萎えた。地形図を見たところコンタの混み具合からどんな滝が現れるのか見ものであった。沢の両側は明瞭なV字形で、狭い川岸にはたった今食い倒されたと思われる蕗の散乱が延々と続いていたが、その上は冷たい水流を避けるためには格好のルートだった。と、そのとき、ガサガサガサっと大型動物らしき物音。先頭を行く私にはその主がシカであると確信していたが、しばらく先でヒグマの大きな糞が現れたのには思わず閉口。今は何も言うまい・・・それでも、蕗を倒した張本人はシカだと自分に言い聞かせつつ、時折現れる小滝に程よい緊張感を楽しみながら淡々と標高を上げていった。

ベッピリガイ山三等三角点「美利貝」と金麦

 コンタ920m二股付近で突然伏流となり、水流はそのまま薮に消えてしまった。ここまで、大きな滝はひとつもないが、適度に現れる小滝の登高は大いに楽しめた。「くくっ、、Ko玉・・・悔しいが、良い沢だ」と精久氏。かつてKo玉サポートを強いられたメンバーなら誰でもそう思う。そのくらいKo玉という人物はひどい男だった。Ko玉さんはこの付近から西尾根のシカ道へ逃げている。であればと、我々はそのまま沢形を詰めようとチャレンジするが、すぐに強烈なヤブ漕ぎとなってしまった。ヤブとの濃厚接触とまでは言わないが、傾斜のある斜面での笹は真正面から攻めてくる。頂上までの距離を考えればこんなところで笹と戯れている暇などない。尾根上へのトラバースを敢行、結局のところKo玉ルートの踏襲となってしまったことについては正直言って悔しい。

 尾根上にはKo玉記録にあった、登山道にも決して引けをとらぬ明瞭なシカ道が続いていた。その踏み込まれ具合は正に登山道としか言いようはないが、シカはもちろん登山を目的とはしないので突然消えてしまうから全く気まぐれである。まあ、シカ道とはそんなもの。そう考えるしかない。コンタ1150mからの急な笹薮斜面ではシカ道はすっかり消えてしまった。何の笹かは分からないが、あの強烈なネマガリダケではないことだけは確か。背丈よりも低い軽い笹漕ぎなので、ぐんと標高をかせぐことができたのはラッキーだった。

 飛び出したところは頂上の肩。頂上までは約150mの地点。そこからは軽いヤブ漕ぎで待望のベッピリガイ山三等三角点「美利貝」が我々を迎えてくれた。頂上展望はまるでないが、それを見たければエバさんの記録がある。家に帰ってからゆっくり見れば良い。

 北海道の全山登頂を果たし、今後は今まで協力してくれた山仲間のためなら「登っていないのならどこの山にでも付き合うよ」と言っていたKo玉さん。ベッピリガイ山頂上には、おそらくいつもの赤い帽子をかぶったKo玉さんの笑顔もあったのだろうが、霊感のない私には残念ながら見えなかった。

Ko玉さん、みんなで飲む頂上「金麦」は特別美味いだろう! 三角点にお供えした「金麦」1缶は、彼の供養のため、その後 みんなで飲み乾した。(2020.7.25)

 

【コースタイム】    

メンバー精久さん、ONさん、saijyo

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