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  芦別(1726.5m)   

 
御茶々岳・頂上からの芦別岳

/25000地形図「芦別岳」「布部岳」

芦別岳・本谷コースは写真ではいつも見ていたが、実際に入るのは今回が初めてである。谷が積雪で埋まる残雪期に入られることが多く、5月の本谷は岳人の間では正に定番となっている。ユーフレ小屋から稜線上のお花畑までの標高差約850mを一気に登るダイナミックなコースは道内でも屈指の雪渓ルートであり、多くの岳人に親しまれている。時期が早ければ両岸からの雪崩にさらされ、危険との背中合わせとなるが、雪崩が落着くこの時期であればリスクも小さいようである。今回は南隣のポントナシベツ岳の計画であったが、5月の芦別岳頂上を経由するのであれば、やはり本谷コースが第一選択となる。

ユーフレ小屋までは旧道を辿る。この時期のユーフレ川は増水していて渡渉が困難であるため、登山道を辿るより他に方法がない。登山道は出来るだけ足を濡らさぬよう、かなり無理してコース取りされているためにアップダウンが多く、崩れそうな足場をだましだましへつるところが何ヶ所かある。また、ちょっとした難所もけっこう高度を上げて巻いているため、実際の距離以上にユーフレ小屋までが遠く感じられる。倒木の丸太が橋になっているところが出てくればユーフレ小屋は近い。ユーフレ小屋はなかなか風情のある建物である。小屋自体もそうであるが、小屋とそこから見る険しい峰々との組合せは、道内ではあまり見られないアルペン的な山岳風景を作り出している。

小屋からさらに2030分も進むと、大きなゴルジュとなり、ユーフレ川の流れは完全に雪渓の下に隠れる。そこからは雪渓歩きとなるが、このゴルジュの規模を考えれば、深い青々とした淵が雪渓の下に隠されている状態をつい想像してしまい、自然と雪渓の厚そうなところばかりを探してしまう。何回か訪れていれば大体の目安はつくものだが、初見のために全く予測はつかず、雪渓の窪んでいるところだけは自然と避けてのルート取りとなる。

ゴルジュ以降は雪渓上の快適な登りとなり、キックステップでぐんぐん標高を上げて行く。緩やかに左にカーブしているあたりからT稜が見えてくる。先行には1015名くらいのTu山岳会のパーティが入っている。聞けば海外遠征のための訓練山行とのことである。この時期、訓練の場としても格好のコースなのであろう。両岸のルンゼからの雪崩はこの時期でもあるとみえ、雪渓上には崩れ落ちてきたデブリが各所に広がっている。両岸に切り立つ岩壁の規模も大きく、稜線上の岩峰は遙か頭上である。

ルートはT稜の末端付近を右に曲がり標高を上げて行き、このあたりから傾斜も増してくる。最大で40度前後と話には聞いていたが、スケールが大きく距離があるため、実際以上の高度感を感じる。以前に長靴で入っていた人もいたという話から、足回りについては安易に考えていたが、気温と風向きとによってはこの時期でも厳しい状況は十分に有りうる。車にアイゼンを忘れてきてしまったことを後悔するが、後の祭りである。ピッケルをいつもより深く確実に挿し込み、しっかり支点をとることにして、核心部は終始ラストを歩かせてもらう。何時もよりしっかりと踏み込まれているステップや頻繁に振り返るメンバーの様子から、パーティに精神的負荷をかけてしまったことは間違いないようである。個人装備とはいえ安全に関わる重要な装備は、共同装備と同じくらいの位置付で考えるべきであった。

 ルートは徐々に左へ曲がり、いつ終わるとも知れない急傾斜の登りも途中からは緩くなる。この頃から雨脚も速まり、稜線付近はガスで全く見えなくなる。詰めの緩い斜面を歩き、稜線上まで上りきると雪渓は消え、通称“お花畑”で旧道コースの夏道と合流する。“お花畑”からは雪の付いていない岩場を登り、約10分で立派な標識がある芦別岳頂上に到着する。視界不良と雨のため、ポントナシベツ岳までの藪漕ぎ予定はどのメンバーにも全く歓迎されず、今日は芦別岳までとし、新道を下山することにする。所々に現れる急斜面ではグリセードも楽しむことができる。雪渓が残る意外に長い新道を下山すると、麓では桜が満開であった。(2004.5.16)

PCの故障により初期化したため、当日の写真のデータを消失しました。

【参考コースタイム】 旧道登山口 5:40 → ユーフレ小屋 7:25、〃発 7:40 → お花畑 11:05 → 芦別岳頂上 11:30、〃発 11:55 → 新道登山口 14:10

メンバー ko玉さん、kudoさん、saijyo、チロロ2

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