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       天狗岳(683m)

朝里峠付近から天狗岳を望む

      /25000地形図張 碓

天狗岳頂上到着
この駐車スペースの次が本来の入山口
コルから屏風岳を望む

札幌近郊で天狗といえばまずは定山渓の天狗岳を思い浮かべるが、他にも小さいがなかなか楽しい “天狗”があり、その一つが朝里の天狗岳だ。朝里の屏風岳からの派生尾根上の1ピークといえばそれまでだが、それなりに独立している。屏風岳が地形的な容易さからスノーモビルのメッカとなっているのに対し、この山は屏風岳の西側斜面に守られているためか、モビルの連中も容易には近づけないようだ。この山の一番の良さは何と言っても360°の展望とピークの静けさといえるだろう。何時の頃からか夏道もつけられたようである。

小樽に向かって朝里峠トンネルを抜けると対岸に天狗岳が見えてくる。以前の道道からは見えなかった角度である。標高は朝里峠の通過地点と大体同じで、これから登ろうという者としては少々がっかりさせられる。峠を下って「ようこそロマンチックな街 小樽へ」の看板が立つ除雪スペースに車を停める。道道上には2本の送電線が通過しているが、それを1本しか確認していなかったため、間違えて1つ上の沢形に入ってしまった。もっとも峠を下りながら目測で天狗岳を確認し、同時に駐車スペースも探していたため、最初の駐車スペースに思わず入ってしまったというのが正直なところだ。

そんな訳で当然のことながらいろいろと地形的な疑問を生じたが、不思議と都合の悪い部分は無視されてしまうもの。沢形の右岸側の急斜面をそのままトラバース気味に登りきる。ふと見ると送電線の鉄塔が進行方向に現われる。道道からはかなり登ったので天狗岳まではあとひと頑張りと思っていただけに鉄塔は???であった。簡単な山と高をくくったところが失敗であった。見れば左手後方に特徴的な天狗岳らしきピークが姿を現している。しかも、けっこう遠い。ここで慌てて地形図を見て、予定よりかなり逸れた行動を取っていたことに気付く。全くの方向違いではあるが山域は狭い。少々億劫ではあるがラッセルするしかないようである。

天狗岳頂上から屏風岳を望む

できるだけ標高を保ちながら大きく回り込むことにする。とりあえずは屏風岳との600mコルへ向かうのが良さそうだ。数年前の冬に旧朝里峠から登った屏風岳だが、大した登りもないまま、歩くスキー状態でそのままピークを踏んでいる。頂上は広い雪面の一角だった記憶がある。しかし、ここから見る屏風岳は鋭角的に尖っていて、周りにはその名の通り岩壁の屏風を広げている。この山に登頂しようというのであればやはりこちらから登らなければならないようだ。これからは登り方にも拘りを持ちたいものである。コンタでは現わされていない小沢をかわしながらも木々の間に見え隠れする天狗のピークは徐々に近づいてくる。

600mコルは気持の良い静かな樹林帯となっている。天狗のピークは隠れて見えないが、屏風は木々の間に鋭角的に見える。春を感じさせるこんな晴天のひと時、テントを張ってゆっくりと冷たいビールでも飲みたいものとついつい考えてしまうが、それは仕事をリタイアしてからのお楽しみ。私にとっての本当の豊かさとはそんな心の余裕ということになるのかもしれない。見ると我々を察知したのかウサギの足跡が点々と天狗岳へと続いていた。ウサギには悪いが我々も同じ方向へと向かわなければならない。

樹林帯が途切れて針葉樹の疎林のみの真っ白な天狗岳が現われる。頂上には遮るものはなさそうで、大いに期待が膨らむところだ。頂上の一歩手前で再び休憩、真正面に見える屏風岳は広く大きな姿となっている。このまま登ってしまうにはもったいない感じである。こんなひと時の良さは「ガイドブックにない北海道の山50」の著者である八谷和彦氏が語っていたが、私も最近それを感じるようになった。やはり頂上は呼吸を整え、余裕の中で感性豊かに味わいたいものだ。左側から回り込むようにゆっくり登り詰め、東側が小さな雪庇となった三角形の頂点に立つ。360°の眺望が広がった。朝里岳や余市岳は残念ながら雪雲に隠れて見えないが、朝里岳岩塔群のグレポン(850m)やキロロスキー場の長峰(1079.7m)、石倉山などが広がる。ネット等の情報では知っていたが、やはり実際に目にしてみるとその素晴らしさには格別のものがある。遠くでスノーモビルの爆音が響き渡っているが、それは屏風岳の頂上台地上のこと。この天狗岳頂上は意外なほどの静けさである。

下りは登りで使うはずだった駐車スペースへの斜面を思いっきりトラバース気味に下降する。滑りの楽しさはほとんど味わえないが、登り返しや長い道路歩きはできれば避けたいところ。トラバースでは部分的に45°くらいありそうな斜面も横切るが、この日の雪面の状態では、まず崩れることはないと読んだ。ふと気づくと、意外なほどあっけなく道道が見え、100mほどのずれで駐車地点に出る。小さな山だったが頂上らしい頂上とその展望、そして登頂の壮快感、これが朝里天狗岳の素晴らしさといえるのだろう。(2011.3.13)

【参考コースタイム】道道除雪スペース P 9:25 天狗岳頂上 10:45、〃発 11:10 → 道道除雪スペース P 11:45 (登り 1時間20分、下り 35分 )

 【メンバーsaijyo、チロロ2

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