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   安足間(979.1)

大雪アンガス牧場から望む安足間山

大雪アンガス牧場から望む安足間山

 1/25000地形図 「愛山渓温泉」「菊 水」

現地に着いてはみたが、雪は残っていなかった …
現地に着いてはみたが、まったく雪渓は残っていなかった …
ひと籔こいで、作業道を回り込んで、やっと雪渓が現れた
ひと籔こいで、作業道を回り込んで、やっと雪渓が現れる
最後は雪渓をキックステップで登って頂上台地へ (Ikkoさん提供)

 “あんたろ”、この名の付く山は先日登った安足山を始め、本安足、安足間岳、安足間山と四山あり、由来はどれも同じアイヌ語「アンタル・オマ・プ」(淵のある場所)からである。4山とも同じ安足間川の水源であり、それぞれ区別するために少しずつ微妙に変えて山名としたのだろう。今回はその中の安足間山へ行ってきた。愛山渓温泉への道道223号線は冬期間は閉鎖されており、安足間山へ行くには無雪期に藪漕ぎで行くか、積雪期であればゲートからスキーで行くかの選択となる。道路が開通、しかも山には雪渓が残る時期、それは今のこの時期しかないとのことで、急遽、安足間山へと向かうことになった。

 Ikkoさんとは愛山渓ドライブインで待ち合わせとなる。札幌からの日帰りとあって、5時に自宅を出て、8時に間に合うよう一路道央自動車道を北へと向かった。愛山・上川ICを7時30分頃通過、コンビニのある上川町で高速を出る。まだ30分あると思って待ち合わせ場所に到着してみると、何とIkkoさんは既に偵察を終えて待っていた。入山口付近の雪渓はまるで残っていなかったようで、今日の選択肢としては藪漕ぎ登山しかないらしい。愛山渓温泉へと向かい、そろそろ到着というところで、前を行くIkko車が止まる。聞けばここが安足間山へは一番近い地点とのこと。果敢なIkkoさん、籔をものともせずに直線的にピークへと向かつもりだ。こちらはスキーまで用意してきており、頭の中の積雪モードがそう簡単には切り替わるものではない。

 少し手前には林道が入っており、せめてそれを利用して、北面もしくは北東面へと回りこんでみては? と進言してみる。えっ! Ikko氏はとんでもないといった様子だが彼も大人、ここは妥協してくれたのか、車を300mほど戻して林道ゲート前に置くことにした。ヤマベの沢に沿った林道は意外に立派で、おそらく現在も使用されているのだろう。この林道を西尾根の末端まで進み、尾根の様子を見てみたが、雪渓などどこにも残ってはいない。結局、刈り分けが見えたので籔へと突入することになる。尾根への登り、途中で何度か作業道跡を通過するが、どれも被り気味で期待などとてもできる代物ではない。779m標高点付近まで登って、やっと利用できそうな作業道へと飛出す。

 この作業道は意外にしっかりとしていて、車でもOKといった感じである。尾根を回り込む形で小尾根の北側へと向かう。そうこうしているうちに斜面に雪渓があらわれた。やった! これで成功間違いなしだ… 何となくほっとした気分にもなる。すぐに雪渓の斜面へと取り付きたいところだが、まてまて、もらいの少ない乞食になっては元も子もない。もう少し先の小沢から雪渓をつないだ方が、ぐんとピークに近づけて効率的だ。小沢の流れは細く、プラブーツでも何も気にすることなく進んで行ける。左岸側の斜面には雪渓がまだまだ残っていて、ルートとなる西尾根上へはどこからでも上がれそうだ。

最後の最後に突如現れた岩峰 ・・・ ! 樹木の間からは鋭角的な愛別岳見えた 
二等三角点「安足間山」と「金麦」
頂上にはヤマツツジも咲いていた 二等三角点「安足間山」と「金麦」

 そうこうしているうちに流れが消えて急な雪渓をつないでの登高となる。斜面は急だがキックはしっかりと刺さり、見る見る標高を上げて行く。最後は一部籔漕ぎとなるが、難なく頂上台地上へと到達、やれやれである。台地上はまだまだ籔よりも雪渓が優位、やっとここへきて自分の思い描いてきた登山スタイルだ。さあ、頂上! と、意気込んで進んで行ったが、行く手には密度のかなり濃い樹林帯? が見える。いや、違う。よく見てみると、なんと想像もしていなかった岩峰だった。藪山の籔ピークと決め込んでいただけに不意打ちでもくらった格好である。幸いなことに岩峰自体も樹林に覆われており、冷静に考えればどこからでもルートが取れる。Ikkoさんは弱点を探して反対側へと回り込み、私は直登を選ぶ。考えてもいなかった緊張感、この緊張感こそが山の山たる魅力といえるのかもしれない。

 こんな人が聞いたこともない山中で大怪我でもしょうものなら洒落にもならず、慎重な上にも慎重に三点支持で樹木につかまりながら頂上の一角へと飛出す。ほっと一息、ふと見れば数メートル先の頂上には既にIkkoさんが到着していた。この勝負、またしても軍配はIkkoさんに上がる。心の中だけだが、正直、地味だが密かに勝負に出ていた。だが、急がば回ったIkkoさんに分があったようだ。頂上は実に素晴らしかった。メインとなる大雪山は樹林で塞がって見ることが出来ず。鋭角的に空へと伸びる愛別岳のみが隙間から望むことができた。一方、北東側には大雪アンガス牧場が広がっている。こちらは黄土色の土煙が広範囲に舞っていて、ふと中国の黄砂の来襲かと思ったが、標高の高い高原状の土地なので、牧草の新芽が芽吹く前のこの時期とこの強風・乾燥で、こんな凄い光景を作り出したのだろう。それにしても大迫力である。背後には上川三山や天塩山塊、チトカニウシ山などが広がっていた。

 下りは登りで使った林道を辿ってみる。結局、途中でショートカットしたが、無事に往路の籔への突入口へと出ることが出来た。知っていればそのままこの林道を辿るところだが、知らないことこそが未知の山の面白さであり、楽しさなのだと思う。思いも因らぬ岩峰の出現等、安足間山は藪山の面白さを十分に備える山といえるのかもしれない。(2015.5.6)  

参考コースタイム】ヤマベノ沢林道入口 P 8:35 → 小沢出合 9:20 →  安足間山頂上 10:20、〃発 10:45 小沢出合 11:05 ヤマベノ沢林道入口 P 11:35   (登り1時間45分、下り50分)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo

 

 頂上岩峰  (Ikkoさん提供)

咲きかけたヤマツツジと大雪山  (Ikkoさん提供)

安足間山から大雪山を望む  (Ikkoさん提供)

大雪アンガス牧場では強風によって土ぼこりが舞い上がっていた  (Ikkoさん提供)

安足間山から望む屏風岳  (Ikkoさん提供)

<安足間山

 

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 別(636.2)

大雪アンガス牧場から見た別取山

大雪アンガス牧場から見た別取山

 1/25000地形図 「菊 水」

奥パンケ上川林道に車を止める

 1日1山では終わらないIkkoさんの計画に乗り、安足間山の下山後は大雪山麓のコブとも言える別取山へと向かうことになった。一般的には、何だ、それ?… となるだろう。“べっとりやま”とでも読んでしまうと、特に竹を割ったような性格の御仁には耐え難い山名となってしまう。この山の読みは「ペートゥワルペッ(pe-tuwar-pet 水・ぬるい・川)」(旭川市史)からペイトル山が正解である。地形図をなめるように見なければ、ほとんど気付かれることのないマイナーな低山、それがこの別取山だ。

籔をかき分ける Ikkoさん

 低山歩きのスペシャリスト・Ikkoさんの車を追って大雪アンガス牧場へと向かう。その入口手前からパンケフェマナイ川沿いの奥パンケ上川林道に入り、砂防ダムが二ヶ所、その先が我々が考えた別取山への取付き口である。さっそく流れの細いパンケフェマナイ川を渡り、すぐに小沢にルートを取る。既に源頭といった様相で、沢形が消えると笹薮漕ぎとなる。目指すピークもそう遠くはないといった雰囲気で、楽勝ムードが漂う。ところが、ここで立派な林道へと飛出して気分的には興醒め、仕切り直しとなる。

 林道を進んで行くうちに、古い刈分け跡の入口を見つけ、ひょっとしたら頂上までの刈分け? と、つい期待してしまうが、そんな都合の良い刈分けなどそうそう見つかるものではない。斜面に何本か通っている刈分け跡を段々に上がって右往左往、小休止すればズボンにマダニも登場する始末。マダニは先行者に多くくっ付くので、先頭に立ったときには十分に観察しなければならない。そんな時期に入ったのか… 季節の移り変わりとは速いものである。そうこうしているちに何だかんだで頂上台地の一角へと到達したようだ。ここまでくればこっちのもの、後は150mほど先の頂上を目指して笹薮を漕ぐだけである。

 何の変哲もない藪の中の頂上だったが、樹木の間には上川三山が望め、それはそれなりに味のある頂上風景といえる。だが、未だ三等三角点「別取山」を確認していない。それを確認しなければ納得できないのが我々籔ヤの性というもの。Ikkoさんも私も持ち合わせているノウハウを頭の中で駆使し、しかし、外見はあくまで冷静を装いつつ必死で笹薮地面に集中する。「あった!」最初に土中から標石を見つけ出したのは私だった。「カリッと当たったので、回りを掘ったら三角点だった」。さりげない会話だが、そんなはずがあるわけはない。スパイクのないプラブーツで “カリッ”はありえない。本音で言えばGPSでの経験則から必死で割り出した位置だった。実はここにも一つの“勝負”があった。男とはしょうもない生き物。そんな結論が、この別取山山行の顛末である。(2015.5.6)  

参考コースタイム】奥パンケ上川林道 P 12:20 → 別取山頂上 13:40、〃発 13:55 奥パンケ上川林道 P 14:30  (登り1時間20分、下り35分)    

メンバー】Ikkoさん、saijyo

パンケフェマナイ川を渡ってすぐに小沢へ入ったが、既に源頭といった雰囲気

この時期、ニリンソウが美しかった (Ikkoさん提供)

作業道跡を右往左往  (Ikkoさん提供)

 

頂上から望む宇江内山と摺鉢山

 

土中から出てきた三等三角点 「別取山」

 

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