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      阿部(703m)

 
宮城沢林道入口付近から望む阿部山
宮城沢林道入口付近から望む阿部山

1/25000地形図手稲山」

林道入口付近に車が停まっているが、登山者のものではない
踏跡は直ぐに消え、あとは探検隊である
M風氏のものと思われる頂上看板は樹木の高いところにある
何はともあれ阿部山頂上

  似発寒川と宮城沢川を分ける分水嶺の山、阿部山へ行ってきた。札幌市内の山で、スノーシューが使える冬場にはかなりの賑わいを見せるが、雪が消えたこの時期にこの山を目指す登山者はほとんどいない。なかしべつ・すがわら氏とは以前から約束していた山で、この日は、私も彼も午前中は所用があり、午後からのスタートである。登山のセオリーから言えば、遅いスタートは無謀な登山者と言われてしまいそうであるが、ここは経験者同士の山行、しかも移動距離も短いということで、大目に見て頂きたい。

  宮城沢林道基点には多くの車が停まっているが、北電の工事関係のもので、さすがにこの時期にこの山を登る登山者の車ではない。宮城沢林道は積雪期と比べ鬱蒼とした暗い感じである。午後もとうに過ぎており、普通であれば下山の時間帯、蕗を取りに来たというご夫婦のみが一般入山者といったところだ。地形図上の点線(歩道を示す)の起点に到着してみると、既に歩道は廃道化し、沢沿いに不明瞭な踏跡が続いている程度である。この踏跡もいくらも経たぬうちに消えてしまい、あとは“探検隊状態”である。阿部山東側の尾根はコンタ400m付近から傾斜が増すため、その付近までは沢形を進む方が距離は縮めそうで、水量のかなり少ない藪の被った沢形を辛抱強く進んで行く。この時期の薮山は小さなヌカカが目の前にまとわりつき、下手すると目の中にも飛び込んでしまう。無雪期の鬱陶しさである。

  左岸側の尾根が迫ってきたため、尾根上を目指して藪に突入する。ここで何度か行く手を阻むツル植物をカマで切断して進むが、これが失敗であったと気付くのは後日である。尾根上は広く、鬱蒼とした樹林帯となっていて、その分下草が発達しないためか、藪としては比較的薄くて歩きやすい。コンタ400m付近からはかなり傾斜が増すが、スパイクシューズで、しかもつかまる潅木も豊富とあっては、標高を上げるのもさほどの苦労はない。チロロ3さんは復帰後最初の藪山で、急斜面に四苦八苦しているようだが、彼女の心気から考えると、来年あたりには以前のように意気揚々と登る姿が間違いなく見られると確信する。

  尾根が狭まり、傾斜が緩むようになると、木々の間に阿部山頂上が顔を出す。相変わらず藪は薄く、ところによっては踏跡のようにも見える。獣道かもしれないが、札幌市内でもあり、エゾシカのものとも考えにくい。足下には伸びきったアイヌネギが見られ、既に葱坊主が頭を出している。頂上が近づくと尾根が広がり、平らになる。少し高くなったところに小さなお花畑があり、頂上到着かと思ったが、頂上は十数mほど先であった。だれによるものかは判らないが、阿部山と書かれた手製の看板が樹木の高いところに掛けられている。木に登らなければ手に触れることができず、積雪期に掛けられたもののようだ。この山には三角点がないため、冬場に一番高いと思ったところに取り付けられたのかもしれないが、私としては先ほどのお花畑辺りが一番高いように感じられた。樹木の間から山々も見えるが、視界が分断されていて、どれがどの山なのか全く判らない。休んでいると、チロロ3さんのダニが這っているとの声、この時期は一見いないようでいて、やはり彼らもしっかり活動しているようである。午後発ということで、時間的な余裕はなく、すぐに下山開始とする。

林道に飛び出し、ほっと一息

  さて、いつものことだが、藪尾根の下降は難しい。方向に当たりをつけて、尾根筋へ入ったまでは良いが、少し気を抜くと右に左に視線よりも高い部分が現れ、筋を外したことに気付かされる。その度毎に藪のトラバースで細かな修正を加える。コンタ400m〜500m付近の急斜面は尾根筋が不明瞭なため、完全に筋を外してしまったようだが、時折見える向かい側の山影を参考に次の目標物となる樹木を目指して下りさえすればどうにかなりそうだ。日が長い季節とはいえさすがに16時を過ぎると薄暗い感じとなって行く。私として、こんな場面で方向を見失うことなど到底考えられないが、時間的な余裕がないというだけで何かしらのプレッシャーとなっていることだけは事実のようである。沢筋へ入って行けばそれも良いのかもしれないが、この時間帯での沢下降も何となく億劫であるし、さらに薄暗い下降となりそうだ。一度入り込んでしまった沢形から、再び尾根へ登り直し、笹を漕いでしばらく進む。正面に送電線の鉄塔が近づいたため、最後は水流のしっかりとした沢形へと入り込む。入山時に通過した沢であった。水流の脇には踏跡が見られ、いくらも歩かぬうちにあっけなく宮城沢林道へ飛び出した。結局、途中に作業道も集材路も何もなく、純粋に頂上までの藪漕ぎのみの往復であった。

  やはり午後発は精神的に余裕がないと感じた。体力的に乗っている時であれば、正直なところ真っ暗でも動ける自信はある。しかし、少々メタボ化した今の自分にそんな自信などない。下山後2日目くらいから、顔中が腫れ出した。今年最初のウルシの洗礼である。いつもであれば手足がその中心となるところだが、カマでウルシを切断、その手で汗を拭いたことが原因してしまったようである。仮にもサービス業に携わる私として、人に顔を会わす度の同じ説明の繰り返しが何とも面倒であった。 (2008.6.8)

【参考コースタイム】宮城沢林道入口P 13:40 阿部山頂上 15:50、〃発 16:15 宮城沢林道 17:25 → 宮城沢林道入口P 17:45  
                    (登山時間;登り2時間10分、下り1時間30分…休憩時間を含む)
メンバー】なかしべつ・すがわら氏、saijyoチロロ3(旧姓naga)

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